親の心子知らず

娘は二浪した後、希望大学に合格した。 娘の頑張りを知ってはいるが、心から祝福は出来なかった、なぜなら、経済的余裕が無いから。 今さら娘に、大学には行かせてあげられないとは言えず、学費を借金した。 娘、「私、頑張るから」 私、「無理をしたらダメよ」 そう言って送り出した娘だが、入学から10ヶ月後、突然、家に帰って来た、大きいお腹をして。 冗談でも「太った?」と言えるレベルではない、娘の大きいお腹。 私、「怒ったらダメよ」 夫、「分かっている」 娘、「大学を辞めたから」 私、「これからどうするの?」 娘、「この子を産む」 夫の落胆は分からないでもない。 私、「子供を産むにはお金がいるのよ」 娘、「分かってる、働く」 私、「働くって、そのお腹で、どうやって働くの?」 娘、「お母さん達には迷惑は掛けないから」 その一言で夫は家族に初めて涙を見せた。 娘、「ごめんなさい」 夫が泣いたのは、娘に裏切られたからではない。学費を借金する時、「これ以上は貸せない」と言われていたからだ。 夫、「お金の心配はするな」 私、「・・・」 翌朝、夫は娘の出産費用を稼ぐために家を出た。 夫が家を出たのは今回が初めてではなく、娘が産まれる時も、夫は出稼ぎのために家を出た。 夫が家を出た2ヶ月後、無事、子供が産まれた。 夫が孫を抱けたのは、家を出た3年後。 3年も掛かったのは、娘の学費と出産費用の借金返済があったから。 夫、「ただいま」 私、「おかえり」 夫を出迎えたのは、私だけ。 娘は子供の父親と結婚をし、2年前、家を出て行った。