死んだアロワナ

「アロワナが死んだのよ!」
伯母が興奮しながら電話を掛けて来ました。
「もう、私どうしていいか分からないわ」
只事ではないようです。
「伯母さん、落ち着いて話してちょうだい」
私はゆっくりと問いかけました。

伯母の旦那は簡単に借金をするルーズな人です。
ところが会社では真面目に仕事をしてそれなりの評価を得ている人でした。
数年前にバイクの事故で左足を痛めてから趣味のバイクに入れ込むことは
なくなりましたが、バイクの次に目を付けたのは高級魚の飼育でした。
家の中は、外国の珍しい魚が各部屋に置かれ、さながら小さな水族館のようでした。
全く興味のなかった私は、それらの魚が数万円から数十万することを知りませんでした。
だから、家でキレイな魚を飼う趣味っていいじゃないかと思っていました。
「アロワナって、ひょろっと長い古代魚なんだけど1万円くらいだと思ってたのよ
それが40万円っていうじゃない!しかも会社の友達からお金を借りて買っちゃったのよ。
それでよ!夜中に水槽から飛び出して死んじゃったのよ〜」

ああ、それはお気の毒です。
ところが会社の友達からお金を借りたとなると穏やかではありません。
伯父は消費者金融で借りる癖があるので、借りられないようにこちらで仕組んでいたのですが裏目に出ました。

「取り敢えず、おばあちゃんが立て替えてくれるみたいだから。うちだっていきなり
40万円とか用意できないし。伯母さんはおばあちゃんに少しずつ返してあげてね」
幸い、祖母が貯めていた定額貯金でまかなってくれることになりました。
「変な旦那を選んじゃったね。でもうちのじいさんも同じだから親の道子が通るって
やつかもね」
祖母は仕方ないなと溜息をつきながら祖父の方を見ました。